しみず動物病院 Information

千葉県鴨川市 しみず動物病院のおしらせブログです。

どうぶつと暮らそう④

 たまたま飛び込んできた記事が目についたので、房日新聞に久しぶりにコラムを書かせて頂きました。コロナ禍でペットを飼う家庭が増え、どうぶつ達と人との距離感が少し変化しているような気がします。これからも、どうぶつと人とが楽しく暮らせる毎日を応援して行きたいと思います。

 

マイクロチップは転ばぬ先の杖?

 

 今朝、インターネットのニュース記事を飛ばし読みしていると“コロナ禍の英国、癒やし需要につけ込む「犬泥棒」激増”と言うショッキングな見出しの記事が飛び込んできました。コロナ禍のイギリスでは昨年からロックダウンで外出が減り、自宅でペットに癒やしを求める人が増え、犬の飼育頭数が増えているようで、それにともない犬の価格も高騰し、そこにつけ込んだ犬の盗難被害がかなり増えているそうです。さらにニュースでは盗難された犬のうちマイクロチップを入れていた犬の一頭は、飼い主の元に戻ってきたそうですが、犯人がマイクロチップを取り出そうとして失敗したため、ひどいケガを負っていたと続きます。また、このような盗難事件によって盗んだ飼い犬を繁殖に利用したり、身代金や保護の謝礼金を要求したりする事例にまで発展しているそうで、本来癒やしとなるペットがコロナ禍において犯罪に巻き込まれていることに不安を覚えます。そして、このニュースは、同様にコロナ禍においてペットブームを迎えている日本のペット業界においても起こりえる身近な問題でもあり、昨年の6月に改正された動物愛護法に係わるマイクロチップと言うキーワードを含んだ事例でもあったため、久しぶりのコラムのテーマとして取り上げさせていただきました。

 今回ニュースの舞台になったのはイギリスですが、既にイギリスでは日本に先立って犬猫へのマイクロチップの埋め込みが義務化されています。マイクロチップとは、動物の個体識別を目的とした、15桁の固有の番号が書き込まれたICチップを内蔵した1cm程の小さなカプセルで、犬や猫の皮下に埋め込んで使用します。この固有の番号は埋め込まれた個体特有のもので、日本では、その個体の性別や犬種、生年月日、登録者の住所氏名などのデータを動物ID普及推進会議(AIPO)という所で管理をすることで、AIPOに問い合わせればすぐに飼い主が特定できるようになっています。ご存じの方もいるかもしれませんが、日本では2019年6月の動物愛護法の改正により、すべての犬猫へのマイクロチップの埋め込みが義務化されました。ですが、向こう3年間は努力義務という形で、現在までにマイクロチップが入っていない犬猫は必ずしも入れなければならない訳ではありません。今は、ペットショップから販売されるほぼ全ての犬猫はマイクロチップを装着して販売を行っていると思われますが、発令から3年目を迎える来年2022年の6月からは、新しく飼育する全ての犬猫への装着が徹底される予定です。このマイクロチップ義務化の背景には、脱走などの行方不明、違法な放棄や遺棄、悪質な虐待や繁殖、保健所に保護された後の殺処分を減らすことなどを目的としています。例えば、災害などで行方不明になり保健所に保護された際に、マイクロチップが装着してあれば、個体番号から飼い主を特定し連絡を取ることが可能になります。冒頭のイギリスの事件に戻りますが、マイクロチップを実際に取り出されてしまった場合は、残念ながら犬を追跡することが出来なくなります。ただ、今回のように取り出されなければ飼い主の元へ戻ってくる可能性もあるので、盗難などの一定の抑止力に繋がるものと考えられます。また、日本でもイギリスと同様、コロナ禍でペットを飼う人が増えているとの報告もありますが、全ての飼い主が良心的な訳ではなく、飼ってみたら思っていたのと違った、経済的な理由からなど、残念ながら不法に放棄や遺棄する飼い主も増えているようです。マイクロチップの装着は飼い主の特定に繋がるため、こうした行為を未然に防ぐことにもなります。

 今のところマイクロチップが装着されている動物はペットショップから購入された犬猫がほとんどですが、動物病院ですぐに装着することが可能です。もし装着を迷っている方がいましたら、かかりつけの獣医師と相談の上、迷子や盗難の被害の防止など、動物愛護の観点からも装着を検討して頂ければと思います。また、日本にも訪れたコロナ禍でのペットブームですが、ペットを迎えるという事はそのペットに対して責任が発生することでもあります。安易にペットを飼うのではなく、家族としてその子の面倒を生涯にわたって見ることが出来るのか、きちんと判断した上で、ペットとの充実した日常を送っていただければ幸いです。

しみず動物病院 院長 清水 篤 (2021年2月14日 房日新聞に掲載)