しみず動物病院 Information

千葉県鴨川市 しみず動物病院のおしらせブログです。

どうぶつと暮らそう②

 連日、新型コロナウイルスの感染のニュースが続く中、動物にもコロナウイルスの感染が起こるのか心配されている方も多いのではないかと思います。先日14日に新しいコラムが房日新聞に掲載されました。今回は動物への新型コロナウイルス感染についての現状をまとめたものを掲載させて頂きましたので、ご興味のある方、動物を飼っている方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。

 奇しくもコラムが掲載された日と前後して、東京大学ウィスコンシン大学の共同研究として、猫はコロナウイルスに感染しやすく、猫同士でも感染を起こす。といった内容の研究結果が報告され、ペットを飼っている方やそれ以外の多くの方々に社会的な動揺を与えているのではないかと心配しています。猫同士の感染については以前より報告がありますし、あくまで今回の論文はそれを裏付ける内容であったとしか言えません。筆者らは論文の最後に猫から人への感染についての検証の必要性について言及はしていますが、現時点で多くの感染者を出している中国や欧米において猫から人への明らかな感染が認められたケースはありません。コラム中にも触れていますが、まずは飼い主さん自身が感染をしないことが動物をコロナウイルス感染から守るための唯一の手立てであることに変わりはありません。コラムを掲載する上で私自身も出来るだけ正確な情報を皆様に提供できるよう気をつけているつもりです。もし不安をあおるような記事が出たとしても鵜呑みにはせず、正確な情報であるかを確認して冷静に判断していただけるようお願いいたします。(以下コラム)

 

犬や猫にもステイホームを

 犬や猫も感染するんですか?最近、来院される飼い主さんから良く聞かれるようになりました。非常事態宣言から1ヶ月以上が経過し、新型コロナウイルスのペットへの感染に関する報道がニュースや新聞などでも伝えられるようになったことや、長引く外出自粛などの影響でペットと過ごす時間が増えたことで、ペットの健康への関心が不安へと変わりつつあるのかな、と最近はそんなことを思いながら診療をしています。一部報道でもあるように新型コロナウイルスのペットへの感染は犬や猫の間で実際に起こっているようです。残念ながら、ニュースでは単に感染があったと報道するだけで具体的にどのようなことが起こっているのかを正確に伝え切れておらず、またペットを飼っている方は、もし自分の身に何かあった場合どう対処したらいいのか不安に思っているのではないかと危惧しています。

 新型コロナウイルスの動物への感染は、2月末に香港で犬が、3月末にベルギーで猫の報告があったのを皮切りに、ニューヨーク州の動物園のトラなど報告が相次ぎ、中でも猫やトラでは一過性の嘔吐や下痢、呼吸器症状などの臨床症状が現れています。ただ、いずれのケースでも共通しているのは、動物への感染源が新型コロナウイルス感染者である飼い主や飼育員である事と、これらの動物が人への感染源になっていないと言うことです。現在も世界中の施設で動物に対する新型コロナウイルスの研究が行われていますが、共通の見解として、どのくらいのウイルス量で感染が成立するのか不明であること、たとえ動物に症状が現れても軽症であること、感染した動物が人への感染源となる可能性は限りなく低いこと等が報告されていますので、今のところ動物の新型コロナウイルスの感染に対して過度の不安を抱かなくてもいいようです。

 では、ペットへの新型コロナウイルスの感染を防ぐにはどうすればいいでしょうか。アメリカ疾病予防管理センターCDC)ではペットの飼い主向けに、家族以外の動物や人との接触を避け、犬はリードでつなぎ飼い主以外の人や動物との間隔を2mあけることや公園やドッグランなどで犬や人が集団とならないよう気をつけること、猫は出来るだけ室内で飼育すること、などのアドバイスをしています。つまり、犬では他の犬や人との間にソーシャルディスタンスを、猫ではステイホームを心がけるように呼びかけています。そして、何よりも大切なのは飼い主さん自身が感染しないよう気をつけて生活することが、このウイルスの感染から家族やペットを守るために最も重要な事だと思います。

 一方で、もし新型コロナウイルスに感染してしまった場合ですが、感染者のペットの預かりについては世界的にも問題となっており、アメリカ獣医師会やCDCでは、新型コロナウイルス感染者のペットの預かりには慎重な対応をするよう注意喚起を促しています。現在、日本では感染者の飼育するペットの預かりについては個々の施設に対応をゆだねていますが、東京都獣医師会では感染者の飼っているペットを預かるためのガイドラインを作成しており、感染者からペットを預かる際に直接動物を受け取らないようにするための引き渡し方法をイラストで詳しく解説しています。また、ペット保険のアニコムは、感染者のペットのお預かりをする「#stayanicom」プロジェクトを展開しており、いずれもホームページ上で詳細を確認できるので、ペットを飼っている方は、いざというときのためにも一度確認しておくといいでしょう。インターネットが苦手という方は千葉県獣医師会も独自に感染者のペットのお預かりについて検討していますので、お近くの会員病院に相談してみて下さい。

 自粛要請からもうすぐ2ヶ月が経とうとしています。先日ある番組で、政治学者のイアン・ブレマー氏がコロナ危機を乗り越えるためには?との質問に「犬を飼うといいです。」と答えていたのを思い出します。人は他者とのつながりが必要な社会的動物ですが、他者とのつながりを制限した長引く自粛生活は人間性を保つのを困難なものとしています。しかし、ペットは一緒にいることで私達の気持ちを落ち着けてくれますし、彼らがもたらす「癒やし」の恩恵は何ものにも代えがたいものです。そんなペット達と充実したおうち時間を過ごすために、室内でできる遊びを考えたり、なかなか出来なかったしつけのトレーニングをしたりしながら過ごすのもいいかもしれません。そして飼い主さん自身が感染しないよう気をつけつつ、ペットと楽しくステイホームをしながら、一日でも早く日常生活が取り戻せるよう今を乗り越えていきましょう。(2020年5月14日房日新聞に掲載)

 

最後までお読みいただきありがとうございます。記事の内容については情勢により随時更新される可能性があります。内容に関してご不明な点などありましたらご連絡下さい。

 

しみず動物病院 院長 清水篤